大判例

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東京高等裁判所 平成12年(う)1351号 判決

被告人 三上宣彦

〔抄 録〕

論旨は、量刑不当の主張であるが、所論に対する判断に先立ち職権をもって調査すると、原判決には、以下のとおり判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある。

原判決は、罪となるべき事実として、「被告人は、酒気を帯び、呼気一リットルにつき〇・二五ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態で、平成一一年六月一六日午後零時ころ、埼玉県飯能市大字阿須一番地九セブンイレブン阿須店駐車場において、普通乗用自動車を運転したものである」との事実を摘示し、右事実は道路交通法の酒気帯び運転の罪に当たるとしている。

ところで、道路交通法にいう「運転」とは道路において車両等をその本来の用い方に従って用いることをいい(同法二条一項一七号)、同法にいう「道路」とは、道路法二条一項に規定する道路、道路運送法二条八項に規定する自動車道及び一般交通の用に供するその他の場所をいうものとされており(道路交通法二条一項一号)、原審で取り調べた証拠及び当審における事実取調べの結果によれば、本件駐車場は、コンビニエンスストアであるセブンイレブン飯能阿須店(原判決は「阿須店」としているが、これは略称である。以下「セブンイレブン」という。)の来客用の駐車場であると認められるから、本件駐車場が道路法二条一項に規定する道路又は道路運送法二条八項に規定する自動車道に当たらないことは明らかである。そして、右証拠(当審における事実取調べの結果を含む。以下同じ。)によっても、セブンイレブンの来客用の駐車場であるという以外に本件駐車場の利用状況は明らかでなく、本件駐車場が一般交通の用に供されている場所であると認めるには足りない(最高裁昭和四五年(あ)第一八四八号昭和四六年一〇月二七日第二小法廷決定・裁判集刑事一八一号一〇二一頁参照)。したがって、本件駐車場は道路交通法上の「道路」とは認められない(なお、道路交通法及び道路運送法には平成一一年法律第八七号による改正があり、本件当時は、右道路運送法二条八項の規定は同条九項とされていたが、内容に変動はない。)。

そうすると、原判決が認定した事実は罪とならないというべきであり、右事実について道路交通法の酒気帯び運転の罪が成立するとした原判決には、道路交通法一一九条一項七号の二、六五条一項、二条一項一七号又は同項一号の解釈・適用を誤った違法があり、右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、所論について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。

よって、刑訴法三九七条一項、三八〇条により原判決を破棄し、同法四〇〇条ただし書を適用して、当審で予備的に追加された訴因に基づき、被告事件について更に判決する。

なお、前記証拠によれば、被告人は、当時ブロック工として稼働していたもので、本件当日、昼休みに友人方を訪ねるため仕事現場から二日酔いの状態で本件車両を運転して出掛け、途中でジュースを買ってから右友人方へ行こうと思ってセブンイレブンに立ち寄り、本件駐車場に本件車両を駐車し、いったんエンジンを止めた上で同店内に入ったこと、ところが、気が変わり、何も買わないまま一、二分で同店を出て本件駐車場に戻り、本件車両の運転を再開した直後、誤って後方の駐車区画に停止していた車両に追突してしまったことが認められる。そして、原審で取り調べられた証拠によると、当初の訴因も原判決の認定事実も、右再開後の運転行為を対象としていることが明らかである。しかし、被告人の右運転状況に照らすと、被告人のセブンイレブン付近道路及び本件駐車場における運転行為は、エンジンを止めるなどしたことによって中断したとはいえず、継続的なものと見るべきであって(仮に、本件駐車場が道路に当たるとしても、再開前後の各運転行為が別個の酒気帯び運転の罪を構成するものとは解されない。)、本件駐車場に入る直前のセブンイレブン付近道路における運転行為を対象とする当審で予備的に追加された訴因は、当初の訴因と公訴事実の同一性を欠くものではないと解するのが相当である。

(安廣文夫 松尾昭一 金谷暁)

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